追悼 野村さん

2020.03.12 Thursday

0

    防衛省・自衛隊は年に一度「高級幹部会同」と称する会議を行います。全国から陸海空の将星と局長級の官僚が市ヶ谷台に参集して頭揃えをする、重要な位置づけの会議です。勿論、最高指揮官である総理大臣が参加して訓示を垂れます。会議の翌日には、統合幕僚長以下制服組が参内して拝謁の栄に浴します。

     

    平成22年(2010)1月13日の会同では、ゲスト・スピーカーとして野球の野村監督を迎えました。防衛省大講堂の壇上に、ひょこひょこっと現れた野村さんの第一声(ぼやき)は「場違いなところに来た」でした。野村さんは先ずこの言葉で我々聴衆の心を掴んだのですが、この第一声はあながち彼のウケを狙った作戦だけではなかったと思います。百人近い将官を前にすると、初めての人は普通にちょっと引きます。と言いつつ野村さんは、その後いつもの通り淡々と話をされました。テレビで観るとおりの話しぶりでした。10年前のことなので、野村さんが何を語られたのか詳細については記憶しておりませんが、彼の口癖である「長嶋は向日葵、自分は月見草」はよく覚えております。野村さんはいろんな場でしばしばこの表現をしておられますが、この言葉は彼の野球への情熱、そして活力の源泉だったのではないでしょうか。

     

    導入部分で野村さんが述べた、次の言葉は強く頭に残りました。

    ***********************************************************

    監督になって成果が出ると、ちょくちょく講演の依頼が来るようになった。自分は話下手で人前で話をするのは苦手なので、旧知の草柳大蔵さんに「講演を受けていいものかどうか」と訊いてみた。すると草柳さんに次のように言われた「貴方は功成り名を挙げたのだから、どんどんお受けなさい。但し、次の二つのことを忘れてはいけません。貴方は野球のことだけを話しなさい。野村の話を聞きに何百人来ようと、みんな野球の話を聴くために来ているのです。現下の国際情勢がどうだとか、日本経済の動向についてなど、野村から聴こうなど誰も思ってない。だから野球のことだけ話しなさい。もう一点、決して一夜漬けの知識で話をしてはいけませんぞ」。

    ***********************************************************

    野村さんも野村さん、草柳さんも草柳さんですね。とても含蓄のある言葉です。

     

    話の中身は殆ど忘れましたが、引き込まれるように聴いて、あっという間に講演の時間が過ぎました。この日ノートに書きつけた箇条書きのメモには、「野村語録」として次のように記してあります。

    ・結果がすべて

    ・人間的成長なくして技術的進歩なし

    ・努力に即効性なし(但し正しい努力か? 自分に合った努力か?)

    ・失敗と書いて成長と読む

    各項目にはそれぞれ、ご自身の野球の経験から具体的な例を挙げられたはずですが、残念ながら記録にありません。

     

    何時だったかテレビで観たのですが、人前で話す(講演)のが不安で嫌がる野村さんの背中を押したのは奥さん(沙知代さん)。上記の草柳さんも奥さんを通じて知り合った方だった(ようです)。野村夫人は歯に衣着せぬ物言いですから、一時マスコミを賑わせ随分パッシングもありましたが、そんな時にも野村さんが奥さんのことを悪く言うのは聞いたことがない。夫人が先に逝かれ、野村さんが「感謝しかない」と言っておられたのが強く印象に残っています。

     

    私が言うのも僭越ですが、歴史に残る第一級の野球人だったと思います。合掌

     

    【眦菁郢襪離フィシャル・サイト】

    http;//www.umihiro.jp

     

    博海堂

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    コメント
    コメントする