危機管理に関する一視点 II

2020.04.03 Friday

0

    下っ引き の八五郎(ハチ)が「て〜へんだ〜て〜へんだ!」と叫びながら、(銭形)平次親分の家に駆けこむシーンが毎回ありました。

     

    若い頃一緒に勤務した或る先輩は、自分が失敗したり思わぬ事態が起きた時、上司である艦長に報告する際には決まって「艦長、大変なことになりました」と枕詞を付けておりました。こう言われると大概の上司は「いったい何事か」と一旦構え、そして「何だ、言ってみろ」となります。そして具体的な報告を受けると、多くの場合は「な〜んだそんなことか。大したことないじゃないか」となる。これとは逆に(勿論、事によりけりではありますが)、「艦長、大したことではないんですが・・・」と持って行くやり方もある。そう言われると、報告を受ける側は「そうか、大事件ではないんだな」とひとまずは安堵しますが、部下の言葉を額面通りに受け止める上司はまずおりません。

    事程左様に、両者(報告者)が抱えている事案の重要度はさほど変わらなくても、受ける上司さんも人間ですから、報告のされ方によって心理状態が微妙に違ってきます。指揮官の心理状態、即ち心の持ち様が違うと、報告した部下に接する態度やその後の措置にも多少の差が出てくるのは人情でしょう。この例えは下から上への報告ですが、上から下への通知や通達にも同じことが言えます。

     

    さて現在のウイルス禍、大変失礼な例えなのですが、日本が災禍を被る初期の段階において「ハチ」の役割を担ってくれた方、即ち早い段階から警鐘を鳴らしていたのは極わずかの人だと思います。絶対多数の国民は一抹の不安を覚えながらも、これほど ”て〜へん(大変)な事態” になるとは思っていなかった。人間の勘は経験と知識に裏打ちされるもの、主として経験を通じて培われるものだと考えておりますが、「て〜へんだ」と叫んだ人には専門家でも有識者でもない人もいたと思う。素人に大した情報はもたらされませんし、正確な情報を入手する手段もないので、単にその人の感性(直感)に依るものでしょう。

     

    所謂、専門家や知識人と呼ばれる人たちは、そんな素人の意見にも耳を傾けることが大切です。何故か? 全く門外漢の人は時に専門家が想像もしない、或いはその道のプロが思いもよらない見方をすることがあるからです。ここで言う素人とは、或る案件についての素人と言う意味で、勘が働く人は一芸に秀でた人や他の分野の第一人者であったり、それなりの人であることが多い。自分が専門とする分野の見方や考え方が、往々にして他の分野にも応用できるということでしょう。現役を退いて多くの民間の方と接して、そのことを痛感します。経歴だけから言えば私は、一応、国防や安全保障をかじっていると見做されます。ですが全く違う分野の方と話をしていて、目から鱗が落ちるような思いをすることが度々あります。その際、相手の性別や学歴や職業や年齢には関係ありません。

    組織を引っ張る人や個人の見解が社会に影響を及ぼすような人は、多様な意見にも耳を貸す姿勢が求められます。裸の王様は論外ですが、一点集中の専門馬鹿になってはいけないと言うことです。市井の声も拾い、最適解を見出して判決を下す。そして決心して、組織を動かす指揮官には責任が伴ないます。

     

    意志決定(判決)のプロセスで、もう一つ重要な要素は時間と時機です。とりわけ危機に直面することが予想される場合、或いは危機に向かいつつある時には、速やかに行動に移さなければいけない。事態が深刻であればあるほど、悩ましい問題は多々ある。しかし、どんなに素晴らしい案や計画を持っていても、時機を得なければ画餅となるか陳腐化するか、或いは愚策としてゴミになるかです。内容によっては後年の教訓やひな形にはなり得ても、現在の問題解決に寄与することは殆どありません。逆にたとえ大雑把な計画であってもタイムリーに発動すれば、大筋で間違いがなければ及第点は取れる。走りながら考えることもできます。最初からピシャリと決めればそれに越したことはないのですが、凡人(人間)はなかなかそうはいきません。我々は「兵は拙速を尊ぶ」或いは「拙速優遅」と称して時機を重視します。今日で言うスピード感です。

    もう一つ重要なこと、それは「兵力の小出し=逐次投入」は作戦を誤ること(が多い)。相手(事態や敵)が手強いほど、努めて作戦の初期段階で大兵力を投入し一気呵成に攻めるべき。勿論、投入する兵力があっての話です。相手の出方を見ながら小出しにして、情勢を見つつ修正していくやり方もありますが、これはドツボに入るリスクを伴います。最終的には敵を殲滅する、殲滅できるという確信があって大攻勢に転じる前の助走、敵との間合いを取る、或いは時間稼ぎであればいいのですが・・・。

    個々の作戦で善戦しても、大戦略を誤ると悲惨な結果をもたらします。我々日本人は、そのことを身に染みて学習したはずです。

     

    以上、現下の国難に何のお役にも立てない歳よりの能書きです。

     

    玄関で靴を脱ぐ(土足厳禁)、風邪を引いたらマスクをする、外から帰ったら手を洗う・うがいをする、一日一回は湯船につかる、食事をしたら歯磨きをするなどなど、他を思いやる心や清潔を重視する文化・習慣を育んでこられた先人に感謝します。 

     

    考えたくはないのですが、どうしても頭にちらつくことがあります:

    もしこの情勢(コロナ禍)下で首都直下型や南海トラフ大地震が起きたら、この国は一体どうなるのか? 首都東京が火の海になったらどうするのか? そうなると、日本に迫る(であろう)脅威は自然災害だけではない。やっておられると信じますが、衝に当たる人たちは頭の体操をしておいて貰いたいと思う。神様は優しいだけではありません。

     

    【眦菁郢襪離フィシャル・サイト】

    http;//www.umihiro.jp

     

    博海堂

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    関連する記事
    コメント
    コメントする