プレゼンス(砲艦外交)

2020.08.13 Thursday

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    先般、尖閣諸島周辺を跋扈する某国海警局所属の警備船(巡視船)と、海軍艦艇の動きが連動しているとの報道がありました。これは台風が来れば彼らが居なくなるのと同じで、俯瞰すれば(衛星で観れば)一目瞭然です。軍事活動としてはごく当たり前の動きであり、驚くほどのことではありません。

     

    彼の国は一党独裁、上から下までピシッと思想(意志)統一された国です。保有する軍隊も党の軍隊であり、政・軍の一致は当然のこと。一方では、自国の領域で国民の生命財産を護るための訓練をするのさえ、長い時間をかけて地元漁協や自治体と入念な事前調整を必要とする国もある。我々の常識で判断してはいけません。漁船・商船ー公船ー警備船ー海軍艦艇、これらが一糸乱れず連携して、最高指揮官の意図を体現できる国なのだと認識することです。問題は、現在の動きに至る動機や意図が那辺にあるのか。そして、どのレベルまで当該国の戦闘(戦争)準備が整っているのか。物理的な準備がどの段階にあるのかです。

    現状では、純海軍艦艇は間合いを取って動いています。だからと言って、決して安心はできないし侮ってはいけない。相手の出方に一喜一憂することよりも、毅然とした姿勢を貫くことです。そして粛々と態勢を整える。相手はジャブを出しながら、我々のそこ(対応の如何)を注意深く観ています。そして、二の手三の手を考えている。或いは既に粗方(あらかた)準備は整っていて、こちらが踏み込んだ対応をする、即ち灰色の船を投入するのを待っている。のかもしれない。

    勿論、軍事だけではなく、政治の動きもモニターしています。同時に、日本の世論にも注目している。似非日本人が、世論を誘導することも十分に考えられます。何しろあらゆる資源が豊富ですから。従って此方としては、隙を見せてはいけないということです。相手の脆弱な所から攻めるのは、軍事作戦の基本です。さても、我が国の弱点は何処にあるのか? 

     

    我が国の現状(一例):

    十年ほど前の旧い話ではありますが、現役の時、隷下にある LCAC(Landing Craft Air Cushion)が某県の某港で行う上陸訓練を視察したことがあります。上陸地点の防波堤には訓練の反対派と思しき人が数人座っていて、談笑しながら訓練の情況を眺めておりました。平日であったためか、みなさん結構いいお歳の人ばかりです。一人の女性がノートに何やら書きつけている。暇なので、太平洋を行き交う船のスケッチでもしているのかと思った。念のため案内してくれた隊員に、「あの人は何をやってるのか?」と尋ねると、LCAC が上陸する回数を記録しているのだと言う。当局との事前調整では、住民や漁場など環境への配慮から「訓練の時間や回数」の提出を求められる。その多くには漁業補償が付帯します。そして、合意に至った訓練内容の概要は公表される。彼ら(監視人)は入手した情報を元に、その回数を正の字を書いてチェックしているのです。こんな国が他にあれば教えて貰いたい。

    後年、この LCAC は東日本大震災の救援活動で獅子奮迅の働きをしました。大量の救援物資を届ける以外にも、このホバークラフトに乗って沖に留まっている輸送艦に行き、仮設風呂で癒された人は多い。件の港やここに住む住民は、東海・東南海大地震が現実のものになれば、想像を絶する被害を被ることが確実視されています。そんなことを知ってか知らずか(私が視察したのは震災前のことですから知らないのは致し方ないのですが)、なんとまぁご丁寧なことでした。いろんな考えがあるのは誠に結構なことですが、それにしてもなぁと思った次第。

     

    最近愚痴が多いな:話を本旨に戻します。

    海軍は外交の一翼を担っています。昔から行われている「砲艦外交」(端的に言えば脅し)はその一環です。例えば、アメリカの白色艦隊。浦賀沖に来航したペリー提督の黒船を知らない日本人はまずいないが、1908年、横浜に来航した白色艦隊(米大西洋艦隊)もアメリカの軍事力(海軍力)を誇示する示威行動でした。とりわけ、日露戦争(日本海海戦)に勝利して忽然と太平洋に躍り出た日本(帝國海軍)に、この艦隊を見せることは世界周航の目的の一つでした。船(艦)体を白く塗っていたので、「白色艦隊(Great White Fleet)」と称されました。

    因みに、2008年の秋、横浜の某ホテルにおいて「白色艦隊横浜来航100周年記念行事」(実行委員長は俳優の石坂浩二さん)が行われ、日本側招待の一員として小生も参加しました。

     

    もう一例を挙げると、先般、亡くなられた李登輝総統関連で、1996年に起きた台湾海峡事件。本件についてざっくり言えば、大陸からミサイルを発射して総統選挙に(間接的に)介入した中国に対抗し、米国はCVBG(空母戦闘任務群)を投入しました。米国の絶大な力(Power Projection)を前に中国は、口では非難を繰り返しても引き下がざるを得なかった。結果、中国の思惑と行動は台湾人の嫌悪感を増大し、所望の成果を得ることはできませんでした。しかし、 空母 の力と有用性を強く認識した中国は、これを機に空母の建造を始め海軍力の増強を一気に加速させました。その後の中国海軍の勃興は目を見張るものがあり、今日の東アジア・西太平洋の情況はこの延長線上にあります。

     

    近年、近隣諸国から繰り返し我が国になされている、理不尽で到底飲めない事案への対応は、「遺憾=いかん砲」などと自嘲の声もありますが、口先だけの憂慮と遺憾では何ら事態は好転しません。現実が示すとおりです。遺憾の表明は「そんなことをしてはイケマセン」程度であり、「しょうがね〜なぁ」の、実質的には「黙認」に近い。そんなことはやる前から織り込み済みだから、遺憾砲を何発撃っても相手は痛くも痒くもない。遺憾ポーズの唯一の効果は、国民の嫌悪感が拡大・拡散することくらいです。

    「波風を立てない」を大方針にすると、或いはお金儲けを優先すると毅然とした対応がとれない。国内の個々の人間関係であれば、「まぁまぁ(穏便に)」が功を奏して丸く治まることは多い。むしろ尖がってる人は嫌われます。しかしこの手法が通じるか否かは、相手によりけりです。ましてや国際関係は国益の衝突、即ち冷厳な力と力のぶつかり合いです。意志や立場を明確にして、実際に行動で示さないと相手にされません。下手をすれば、足をすくわれるか切り込まれるかです。先ずは、相手がどのような国であるのかを、しっかりと認識することです。

     

    戦後70年、我が国は確固とした国家観や歴史観をないがしろにしてきました。と言うよりもむしろ、意図して排除してきました。占領下にあった一時期は仕方がないにしても、今その大きなツケが回ってきています。この壁を一日も早く打破しないと、我が国の更なる発展は期待できません。発展どころか、なし崩し的にシュリンクしていくのは自明です。上手く立ち回って小金持ちにはなっても、他国から一目置かれたり尊敬される国になるのは難しい。この国の将来を見据えた最も重要な施策は、一にも二にも青少年(少女)の「教育」だと思っています。ここに手を付けない限り、トンネルを抜け出すことはできません。これ以上後世に、負の遺産を残してはいけない。

     

    【眦菁郢襪離フィシャル・サイト】

    http;//www.umihiro.jp

     

    博海堂

     

    追記 前回のブログ『ことのは』は、余りにも冗長になるので一部を端折りました。読者からこの点を説明せよとのご指摘がありましたので、我々が使用する艦艇エンジンの「赤黒」について簡単に追補します。

    艦艇の速力は、微速(6ノット)、半速(9ノット)、原速(12ノット)・・・と段階があり、基本的にはこれを使用します。しかし状況に応じて、これらの中間にある速力、例えば10ノットや11ノットも使います。理解を容易にするために、仮に9ノットの機械の回転数(rpm)が90回転、12ノットが120回転とします。ラフに言えば10回転で1ノット増減しますので、例えば10ノットにする場合には100回転にする必要があります。この時の指示が「両舷前進半速・黒10」です。そう、プラス(増速)が「黒」で、マイナス(減速)は「赤」です。

    緊急時や戦闘時に「10回転上げろ・下げろ」なんて、悠長なことを言ってる余裕はありませんから。なんらご参考まで

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

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