『ソロモンに散った聯合艦隊参謀』余話

2017.03.16 Thursday

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    拙著『ソロモンに散った聯合艦隊(れんごうかんたい)参謀』が、間もなく店頭に並びます。正確に言いますと、店頭に並ぶか否かは本屋さんの胸三寸とのことです。出版業界も厳しいようです。

     

    この本は、縦糸に海軍と戦争を、横の糸に軍人家族の愛を描こうとしたものです。ただし、小説ではありません。私の母校(高校:旧制中学)の、そして海軍の大先輩の生涯を辿ったものです。主人公である「樋端久利雄(といばなくりお)」は、昭和18年4月18日、山本五十六聯合艦隊司令長官と同じ飛行機に乗っていて米軍機の追従・攻撃を受け、ブーゲンビル島に墜落し戦死しました。帝國海軍の宝と謳われた男の、あまりにも短すぎる人生でした。

     

    一年近く前に脱稿したのですが、引き受けてくれる版元(出版社)が見つからず苦慮しておりました。そんな時に、救いの手を差し伸べてくれたのは芙蓉書房の平澤社長でした。彼は静かに、しかし毅然と「世に埋もれた人物を発掘するのも、我々中小出版社の使命です」。本当に有り難いことです。私は現役の時から、いつも周りの人に助けられて生きております。

     

    主人公である、樋端久利雄の生涯を辿ろうと決心してから4年が経ちました。途中でいろいろ道草をしたので、本当に集中して向き合ったのは一昨年の春から昨年の春まで、およそ一年間です。私は現場を生きてきた人間ですので、まずは主人公が歩いた道と同じ道を歩くことから始めました。讃岐の生家〜中学校、西荻窪の自宅(借家)から海軍省(霞ヶ関)、などなど。大正・昭和初期の時代と現在では、道路や街並みが大きく変わっています。鉄道も進化しています。国会図書館で当時の地図をコピーして、でき得る限り、主人公が歩いた道を辿りました。国内については、私が知り得る全ての関係地所を訪ねました。時代考証には体力が要りますが、実際に歩いてみると、机の上では見えなかったものが見え、聞こえなかった声や音が聞こえてきます。

     

    生家から中学校への通学途上には、讃岐山脈から瀬戸内海に流れ込む大きな川(湊川)があり、この上に橋(湊橋)が架っています。橋の中程に佇んで川面を眺めていたとき、ふと視線を感じました。辺りを見回すと、川岸で羽根を休めていた「つがい」の白鷺が、優しい目で私を見ていました。このつがいは、間違いなく主人公と夫人だと思いました。彼は日本武尊(やまとたけるのみこと)と同じように、白鳥と化して故山に還った。ごく自然に「白鳥が還る日」という言葉が頭をよぎりました。小説ではないので、本の題名にはしておりません。

    ローカルな話で申し訳ありません。地元の方でないと、私が言ってる意味を理解できないと思います。

     

    補足説明します。主人公の故郷「白鳥(しろとり)」という地名は、その昔、日本武尊が白鳥となってこの地に舞い降りたことに由来します。地元には、日本武尊を祀る白鳥神社があります。由緒ある武運長久の神社です。かつては西の金比羅さん(金刀比羅宮)と並び称され、白鳥は門前町として栄えました。神社の入口には、芸者の検番があったほどです。

     

    私はこの本を、軍事もの・戦記ものに分類してほしくない。しかしながら、今日の国民にとっては馴染みの薄い、軍事用語が頻繁に出てきます。また、戦前の記録などを転写するときには、旧仮名遣いをそのまま、それこそ転写しました。時代の空気を伝えたかったからです。大変読みづらいと思います。でもそこは私のこだわりですので、ゴメンナサイするしかありません。

    全編18万字のなかで、こだわった文字があります。「聯合艦隊」の「」と「帝國海軍」の「」です。この二字だけは、どうしても譲れない。自分自身を納得させることができなかった。「合艦隊」とか「帝海軍」と書くと、なんか腰の周りがス〜ス〜するような感じ。かなりっていうか、相当時代遅れの人間です。

     

    勿論、これは私だけの感性ですので、他人様の出版物を批判するものではありません。芙蓉書房さんには、そんなことは何も言ってないのですが、そのまま採用してくれました。

    若い頃、艦乗り(ふなのり)の先輩が教えてくれました。「佐世保」の読みは「させほ」か「させぼ」か?

    答え1.てんで違う!

      2.ほぼ同じ!

    私は「点で違う」派です。

     

    【高嶋博視のオフィシャル・ブログ】

    http://www.umihiro.jp

     

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    コメント
    いつも楽しみに読んでいます。
    我々は何も「戦前を全否定」するものではありません。主人(=国民)の番犬(軍隊です。言葉が適切でないのはご容赦)が、主人を引きづり廻して、国を台無しにしたのが、昭和20年迄のあなたの先輩達であったことは、肝に銘じて頂きたい。
    • by 名もなき庶民
    • 2019/11/29 12:57 PM
    初めまして
    今、図書館で借りて、拝読中です

    太平洋戦争について、深く考える様になったのは、
    戦後70年で特別番組を何本か見てからです

    今年で58歳ですので、戦争は経験しておりません
    両親、祖父母や親戚が戦争の話をしていたのを
    もっと身を入れて聞いておけばと今になって思います

    夫方には戦死したひともいますし、
    海軍で戦艦に乗っていた人(もう亡くなっています)の
    家族に資料を見せてもらいました

    樋端氏の事は知りませんでした
    (全集で各軍人の上の方は大体首席を通しで読んだ中にいらしたとは思います)

    今はまだ、入学された所を読んでおります

    又、読み終えたら、又は途中にも、
    感想を書かせていただく予定です



    • by れお
    • 2017/05/20 9:48 AM
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