指揮官は仕事をするな

2018.05.03 Thursday

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    数年前に『指揮官の条件』(講談社現代新書)と題して、リーダー特に武力集団における指揮官の在り方について世に問いました。私なりの一区切り、或いは四十年にわたる勤務の集大成ではありましたが、読者から厳しいご指摘も頂きました。私が言いたいことは、この本でほぼ網羅しているのですが、振り返ってみますと言い尽くせていないところも散見され、後知恵もあります。それらを追補として、何回かに分けて描いてみたいと思っています。

     

    まずは「指揮官は仕事をしてはいけない」から。同じようなタイトルの本が出ているようですが、全く目にしておりませんので一部考え方が重なるかもしれません。

     

    現在の私のように、所謂「おひとり社長」の場合には営業から経理まで、はたまた車の運転からコピー作成まで全て一人で汗をかかなければいけないことは自明です。私が言うのは心構えの問題ですから、小さな組織や個人営業の方にも通じるところがあると思います。「仕事をしてはいけない」の意味は、勿論「仕事をしなくていい」ではありませんし、社長はハンコだけ押してくれればいいということでもありません。「しなくていい」のではなく、「してはいけない」のです。似たような言葉ですが、この違いは大きいですよ。

     

    若い頃から仕事一筋で生きてきた人が犯しがちな失敗は、部下の仕事の内容が分かっているだけに、下の人たちの仕事に口を出すこと。上司が部下の仕事の内容ややり方を分かっているのは、ごく当たり前のことであり何ら自慢にもなりません。期限のある仕事やスピードが求められる案件については、時には指導も必要ですが基本的には部下に任せるべき。口を出すにしても、助言する程度に抑える。間違っても「もういい、俺がやる!」なんて言って、部下の仕事を取り上げてはいけない。それでは、部下のやる気を削ぎますし部下は育ちません。リーダーには「待つ勇気」も必要です。待てない上司の多くは、自分に自信がないからです。年中「ああ忙しい、いそがしい」って言ってる人(上司)は結構います。失礼ですが何のこたぁない、自分で自分を忙しくさせてるだけ。それで、俺は(私は)こんなに仕事してるんだと自己満足している。こういう人は多分、スタッフとしては優秀だけど指揮官としてはバツです。周りの人はよく観てますから、この手の人は汗をかいている割にはあまり評価されない(ことが多い)。

     

    仕事人は指揮官タイプと参謀タイプに分かれます。その時の立場(配置)に応じて両方ともこなせればいいのですが、その人の性格も関係するのでなかなか難しい。唯一の自己修正法は、自分がどちらのタイプであるのかを自分自身が認識する・認識できること。そして、どちらもこなせるように努めることです。私の場合、能力や性格を意識して努力はしていたけれど、自分で納得できるほどの成果は得られませんでした。私がどちらのタイプに属するかは、想像にお任せします。言わなくても、日頃の言動で分かるか(笑)

     

    朝一番で部下の報告を聞き、要すれば助言を与えると同時に今後の方向を示す。はっきり言えば、これで社長(リーダー)の一日の仕事の半分は終わり。あとの時間は、部下が戦争(ドンパチ:仕事)をやっている間に、ゆっくりとコーヒーでも飲みながら、地球儀を眺めて戦略を考える。この地球儀と言うのがミソですよ。そして残った時間で、組織がうまく転がっているかどうかを確認する。時々います、30分も1時間も部下を机の前に立たせて、温かいご指導をされる方。部下はみんな思ってる「ばかじゃん」。そう思っていた部下が、年を経て上司の立場になると同じことをする。人間ってのは、なかなか学習しない動物らしい。

    リーダーには、部下の仕事・成果物を「待つ心の余裕」が求められる。カリカリしている人は、間違いなく余裕がない。これは、どんな立場の人、どんな場合にも言えます。例えば夫婦喧嘩でもそうです。余裕を持ってカリカリできれば、それは大したもんですが未だ見たことがありません。

     

    指揮官は自分の責任の範囲内で部下に仕事を任せ、その仕事振りをウォッチして、必要な時に適正な指示を与える。それが役割ですが、必ずしもそうでないとき(例外)もある。それは緊急事態のとき。私は艦乗り(ふなのり)ですので、艦で例えてみます。

    部下が操艦しているときに、どこからか本艦をめがけてミサイル飛んできた。或いは、他の船とぶつかりそうになった。若しくは、何らかの理由で乗員の命が奪われそうになった、などなど。そういう時には、躊躇することなく、間髪を置かず艦長が自ら仕事をする。「おもかじ・いっぱ〜〜い(面舵一杯)、さいだい・せんそ〜く(最大戦速)」。号令の中身じゃないですよ。これは例えでありイメージです。因みに、私は今でもこの「面舵一杯、最大戦速!」という言葉が大好きです。もし、東日本大震災のときに私が洋上にいたなら、間違いなくこの号令を発した。

    平たく言えば、艦長が全力をもって危機の回避に努めるということ。これが基本。要するに、どんな組織であっても、緊急時には指揮官自らが敢然と、持てる限りの力をもって指揮を執り組織や部下を守る。リーダーに求められるのは、そこしかない。あとは鼻提灯で宜しい。

    組織を守るという言い方は、誤解を与えかねないですね。問題になっている〇〇省みたいな、所謂「組織防衛」のことではありません。国を護るということです。念のため。

     

    もう一点、敢えて言えば、部下が失敗したときには自らの責任を明らかにすること。部下の失敗から逃げないこと。部下の仕事上の失敗は、間違いなく業務(仕事)を委任している上司の責任でもある。指揮系統(ツリー)上、何段階上の上司に責任が及ぶかは事の重大性や内容によりますが、少なくとも一次監督者(直近上位)が責任を逃れることはない。仮に部下の背信行為であったにせよ、対外的には、変な言い方だが毅然としてお詫びする。「出来の悪い部下が穴をあけまして・・・」などと、グダグダ言ってはだめ。自分がやったこととして対応する。部下の仕事は自分の仕事でもあるわけで、ごく当たり前のことです。

     

    やや厳しい表現になりましたが、私はそのように思っています。

     

    【高嶋博視のオフィシャル・ブログ】

    http;//www.umihiro.jp

     

     

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