Noblesse Oblige

2018.11.22 Thursday

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    先日、都内のホテルにおいて東京香川県人会が催されました。退役後は、日程さえ合えば参加するようにしております。高校の同窓会とはまた少し趣が異なっており、同郷の人たちや香川ゆかりの方々と話をするのは楽しいものです。同じ地域の出身者が同じテーブルに着くよう配慮されておりますので、年代や性別を超えて話は大いに盛り上がります。古里とは有り難いものです。

    今年の県人会総会は第100回記念ということで、五百人以上の参加者があり近年になく盛会でした。なかでも、節目の年と言うことでお願いしたのでしょうか、讃岐にご縁がおありになる高円宮妃久子殿下のご来臨が得られ、ひときわ華やかな県人会になりました。企画運営された役員や、県の出先機関である東京事務所の職員を始め、関係者の皆さんは大層お疲れになったと思います。

     

    妃殿下はご挨拶で、ご幼少の頃や学生時代に御父君のご実家(在三豊:西讃)を訪れられたこと、お祖父さまやお祖母さまのことなどを、私ども庶民の目線で話されました。誠に僭越ではありますが、内に秘められた知性が自然に滲み出ておられました。前回のブログで「顔と目(瞳)」について描きましたが、時々テレビで拝見するのと紛うことなく、まさしく涼しい目をしておられました。周りの人たちをして何かホッコリさせる空気が醸し出され、参会者はみな郷土讃岐を誇りに思い心豊かな気分になったことでしょう。

     

    ということで、今年の県人会はとても満たされた気持ちで帰路に着きました。と言いたかったのですが、私には何となく釈然としないものが残りました。それは・・・:

    もうこの歳になりますと怖いものなしですから、また現役の時にお会いする栄に浴したこともあり、ご挨拶に伺おうと遠目に様子を窺っておりました。時間もかなり経過し妃殿下の周りも落ち着きが見えたので、頃合いを見計らい、たまたま参加していた防衛大学校(海上自衛隊)の後輩で、元部下だった某君を誘いご挨拶に伺いました。

    さて我々が妃殿下ご臨席のテーブルに近づきますと、同じテーブルに着いておられる或る方が、とにかく早く終われと身振り手振りを交え小声で合図します。ご丁寧に写真はダメダメと。勿論、当方カメラもスマホも手にしておりません。如何に私が不躾とはいえ、その程度の常識は持ち合わせております。前の誰かが「お写真を・・・」とお願いしたのかもしれません。それなりの理由があってのことでしょう。

     

    さて、ここでは細部については言及しませんが、我が練習艦隊が出国・帰国の際には、司令官がご報告を兼ねて宮邸にご挨拶に伺います。我々の頭の中には、海上自衛隊の練習艦隊という発想はありません。日本国の練習艦隊なのです。従って、英語では Japan Training Squadron と訳します。そんなことでして、妃殿下からは「先般帰国し、司令官と一緒にみえた若い方(男女1名)はとても優秀でした」とのお言葉を賜り話が弾みました。と言っても、せいぜい3〜4分のことです。すると小生の厚かましさがお隣さんの気に障ったのか、お皿を指して「長居をすると食事を召し上がれないではないか」とのメッセージ。???勿論、old sailor はそんな横やりにめげることなく話を続けます。妃殿下も嫌なお顔などされるはずもなく、丁重に応じて下さいました。

     

    でも、これ(お節介?)ってどうなんでしょうか。多くの庶民に丁寧に対応して下さり、妃殿下はお食事を摂られる時間もない。おそらくお腹がすかれたことでしょう。宮邸にお帰りになり「ああお腹すいた。何か食べたいわ」となられることは想像に難くありません。やんごとなきお方とて生身の人間ですから。でも失礼を承知で言えば、また不躾な自分を正当化するわけではないのですが、それは仕方がないと思う。絶対にそんなことはないと思いますが、もしそれを否定されたら高貴なお方ではなくなる(ような気がします)。因みに、今回の場は着席での会合ではありましたが、食事はバイキング形式であり、少し時間が経つと多くの人が自由にテーブルを移動します。限りなく立食に近いパーティです。

    某氏の助言は、百歩譲って、我々不躾な庶民に対して無礼なことではない、かもしれない。しかし、やんごとなきお方に対しては、ピント外れで大変失礼なお心遣いなのではないのか。少なくとも、その場は会話が弾んでいる。Old sailor にお気を遣われてのことではありましょうが、妃殿下も話しておられる。それを遮ることになりはしないのか。

     

    海上自衛隊では、任官した若い士官(幹部)が遠洋航海(外国)に出る前に「パーティではガツガツするな」と躾けます。とは言っても若い子だからお腹がすくので、パーティに参加する者には事前に食事を摂らせて送り出す。そう、パーティは訓練の一環なのです。海軍士官が社交の場でみっともない姿を見せるんじゃない、恥ずかしい振る舞いをしてはいけないと教える。名前は海上自衛隊であれ何であれ、一旦外(海外)に出れば日本の NAVY 海軍として遇される。従って、世界に出して恥ずかしくない、世界に通じる海軍士官としての振る舞いや矜持を叩き込む。それが、いみじくも妃殿下がおっしゃられた「優秀な士官」に繋がっている。「優秀」のお言葉の意味は、多少知識が豊富なことや外国語を話すことができる、ってな些末なことではない(と思う)。

     

    彼(彼女)らが長じて司令官や総監になると社交の場も多い。しかし、少なくとも立食パーティの時には、家人を含め食べ物を口にすることは殆どありません。せいぜいワイングラスを手にする程度。勿論、どんなに酒好きの猛者でもガンガン飲んだりはしない。パーティは宴会ではないし、食事を摂る場でもない。勿論、お酒を飲む場でもない。参会者と話をして交流する、お互いに会話を楽しむのが本旨。ホスト(ホステス)ともなれば、多くの方が入れ代わり立ち代わり挨拶に来てくれる。だから一時間半・二時間、時には三時間の立ち話で疲れても、満足して帰途に着くお客さんの後姿を見ると心地よい余韻が残る。そして官舎に着くと「お腹すいたなぁ、ラーメンでも作ろっ」となる。酒好きな者は、お会いした人たちの顔を思い浮かべながら、ゆっくりと飲みなおす。

    長年やってきて、それがおかしいと思ったことは一度もない。現役の頃、尊敬する先輩が標榜しておられた「やせ我慢」、正直、下らんこと言うなぁと思ってました。恥ずかしながら今回、その本当の意味を理解しました。とても奥の深い言葉です。

     

    日本の常識や国際感覚に疎い小生です。ご指導下さったお方に、衷心より感謝申し上げます。大変勉強になりました・・・。

     

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