ノルウェー紀行(後編) 

2019.01.31 Thursday

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    私が三年間勤務した懐かしの大使館は王宮のすぐ裏(北側)にありましたが、現在は民間の手に渡っており”日の丸”も”菊のご紋章”も見ることはできませんでした。ただ建物はそのままで、二階のあの部屋で鉛筆なめてたな〜と当時を懐かく思い出しました。現在の日本大使館は王宮の西側、徒歩5〜6分ほどのビルの中にあります。戸建てに比べると見劣りはしますが、ビルの屋上に翩翻と翻る国旗は鮮やかで存在感を顕示しています。折角の機会でもありましたのでご挨拶に伺いました。アポなしの突然の訪問にもかかわらず、館員(外交官)や現地職員は丁重に応対してくれました。厚かましく参事官(次席外交官)と30分ほど懇談・意見交換してきました。一方的に昔話をしてましたが(笑)。地球の裏側に行っても、恐れを知らないおっちゃんです。

     

    外国で見る国旗は、国内で目にするのとはまた違った趣があります。大使館在任中に政府専用機が訓練でノルウェーに来たのですが、機首に小さな日の丸がなびいているのを見た時には涙が出そうになりました。練習艦隊が海外の港に寄港すると、在留邦人の大歓迎を受けるのも頷けます。オスロを散策できたのは半日だけなので、多くを観て回ることはできませんでした。かつて住んでいた家、スキー・ジャンプの聖地であるフォルメンコーレン(ジャンプ台)、白樺林などなど訪ねたい所は多々ありましたが、次回のお楽しみということで・・・。王宮を起点にして東から右回りに南西方向まで5キロ圏内を歩いてみて、その佇まいや空気が20年前と殆ど変わっていないことに或る種の安堵を覚えました。ただ、時折ですが氷点下の寒空で沿道に座り込んでいる浮浪者を見かけることがあり、やはり時代の変化を感じます。移民を受け入れているが故の光景でしょうか。移民と言えば、人口がかつてに比べると50万人ほど増えているのにびっくりしました。人口約500万人の国ですので、50万は大きいですよね。

    因みに国の人口(population)、即ち国民の数は国力の重要な要素の一つです。日増しに人口が減少している我が国は、それだけ国力が低下しているということです。

     

    ノルウェーは北海油田を擁しているので裕福です。かつては北欧のアラブと言われてました。会議に参加していたスウェーデンの代表が、VOLVO の資本も半分は中国の手中にあり、スウェーデンの経済は大変厳しい。ノルウェーにはオイルがあるので順調だ、と羨ましそうに言っておりました。

    私が在任中の1994年11月、EU加盟の是非を問う国民投票が行われました。時の政府(ブルントランド政権:女性首相)は、欧州の流れに乗り遅れまいと加盟を強力に推進していた。にも拘らず国論は完全に二分され、家庭内(夫婦や親子の間)においてさえ喧々諤々の議論がなされたと言います。我々外交官は投票の行方を固唾をのんで見守っておりましたが、過半数の国民がNEI(NO)を選択しました。結果は本当に僅差でした。NEIの結果が出ると同時に、ノルウェーのEU及びWEUオブザーバー資格の椅子は撤去された。国防省の友人が教えてくれたのですが、投票の翌朝、外務大臣はNATOのネクタイをして登庁したとのこと。もうこの国にはNATOしか残っていない、という彼のささやかな抵抗だった。政府の落胆は目を覆うばかりでしたが、あれから四半世紀が過ぎEUが多くの問題を内包している今日、結果論ではありますがノルウェー国民の選択は正しかったのではないか、と私は思っています。勿論、石油・天然ガスという担保があってのことではあります。

    時あたかも、東欧諸国やバルト三国がソ連の軛(くびき)から解放されて独立に湧いていた頃です。一方で先進諸国は、EUという枠組みでの統合を目指している。このことに私は少なからず違和感を覚え、EUは早晩破綻するだろうと分析(直感ですが)しておりました。私がそう予測したのは、ひとえに national interest (国益)という問題です。如何に 成熟した民主国家であっても、国益の壁を乗り越えるのは難しい。EUの理念は、間違いなく美しい。しかし一部のお金持ちが、多くの貧乏の面倒を見ることができるのか。欧州各国のEUへの統合は、人間の本質に反しているのではないかと思えたのです。誤解を恐れずに敢えて言えば、共産主義のように。

     

    アーカシュ城

    アーカシュ城(国防大学はこの敷地内にあります)

     

    NATO会議(workshop)の内容に少しは言及しないと、何しに行ったんだと言われそうです(笑)。

    会議の主題は ”diversity (多様性)” でした。日本側が「自衛隊における女性問題」、即ち女性自衛官の現状と将来(課題)にフォーカスして発表したのに対し、他の参会者はより広く「多様性」を捉えており、それこそ多様な議論ではありました。参会者の意見や議論が多方面に拡散したため、他人事ながら会議の結果をまとめるのは大変な作業になると推察します。

    議論の中で、ひとつ気になったことがあります。欧州では今日、移民・難民が大きな問題になっています。日本に留学する等、数年間の滞在経験があり、我が国の状況に知悉している某国の学者と(会議の外で)意見交換をしたのですが、彼が言うには「日本にいる外国人は日本の社会に上手く溶け込んでいるが、欧州では全く状況が異なる。欧州先進諸国に来た移民(難民)は、自分たちだけの community を作って同じ地域、同じ地区で生活している。その枠の中だけで生きており、受け入れ国に融和しようとしない。それが犯罪の温床にもなっている」。私はその方面に詳しくないのでよく分からないのですが、日本の現状を肯定的に見る外国人がいることに驚きました。欧州諸国に比べ我が国(民族)は、それだけ寛容で懐が深いということでしょうか。

     

    しかしながら、そんなことで喜んでいる場合ではなく、少子高齢化と相俟って働き手が急速に減少している現状に鑑みれば、将来、日本においてもこの種の問題が起きる可能性は大です。或いは現下の隣国系住民に関わる諸問題も、大きく捉えるとこの範疇に入るかもしれない。すれば、問題は既に顕在化しているとも言える。いずれにしても、予期し得る事態への対策を早急に構築する必要があります。

     

    【眦菁郢襪離フィシャル・サイト】

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    博海堂

     

    下の写真は誰でしょう? 因みに、私ではありません(笑)

                        

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

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