K 事案

2019.01.03 Thursday

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    明けましておめでとうございます。平成最後の年、そして新しい年号の一年が、我が国にとりまして平穏かつ輝かしい年になりますよう、そして皆様にとりまして良い年でありますようご祈念申し上げます。

    今年の第一稿は年末に描き残したノルウェー紀行(後編)を予定しておりましたが、急遽変更せざるを得ない状況が生起しました。残念ながら、正月早々愉快な話ではありません。と言うよりも、タイトルでお分かりのように(分からない方もおられると思いますが)とても不愉快な事件です。

     

    昨年の10月18日に「軍艦旗問題」というタイトルで隣国海軍に言及しましたが、この時には武士の情けでK海軍も半ば被害者のごとく描きました。政治と政争の具にされる海軍に同情してのものです。そんな私の描きぶりに、違和感を持った方もおられたことでしょう。しかし、昨年末に生起したFC(Fire Control:射撃管制)レーダーによる日本哨戒機(P-1)照射事案は、前の「旗」とは本質的に異なる問題です。一つ間違えば国家間の戦争、或いは軍事衝突に発展しかねない要因を孕んでいる、純軍事的な事案だからです。相手国はまさに取ってつけたような言い訳をしているようですが、事実関係として、どう見ても日本側の見解を疑う余地はありません。

    ただ一点、防衛省(海上自衛隊)が公開した映像を観た人の中には、やけに距離が近いな〜、相手が言うように数十メートルまで近接して本当に危険な状態だったのではないか、と感じた人がいるかもしれません。しかし失礼ながら、それは素人の感覚です。海の上で1マイル(2キロメートル弱)と言えば「すぐそこ」ですが、陸の上では遥か遠くです。船の長さから想起すれば、大体の距離は分かろうもんです。それほど洋上と陸上では距離感が違います。しかも撮られた映像の多くは、カメラによってズームアップしたもの。もし艦船までの正確な距離を映像に表示すれば、視聴者がビックリするほど遠いはずです。

     

    これら諸々の事実は世界中どころか、自分(相手国)も分かっているはず。謂わば確信犯ですな。それでも譲らないのは、或いは譲ることができないのは、それが彼の国の外交姿勢だから(でしょう)。しかし、言えば言うほどドツボに入り、国際社会からの信頼を失墜することになります。従って以前(軍艦旗問題)のような、同情の余地はありません。FCレーダーでロックオン(目標を特定)し砲を指向すれば、後は艦長の命によって引き金を引くだけ。もし砲に弾を込めておれば、或いは自動的に給弾されれば、艦長の「打て!」の一声で射手は右手の人差し指を引く。或いはミサイルの発射ボタンを押す。すれば、弾(ミサイル)が出て砲煙が立ち込める。

    威嚇行為としては、ロックオンせず(FCレーダーは使用せず)に、大砲だけを相手に向けるというやり方もあります。これは目に見えるので、絵柄としてはインパクトが大きい。砲口を向けられた側は、仮に示威行動(威嚇)だと分かっていても、また弾は込めていない(カラ砲)と分かっていても、いい気持がするものではない。今回の事案では、流石に砲は向けなかった。もし砲を指向していたならば、これは大変な問題になる。ゴメンナサイで済む話ではない。

    Old Sailor の個人的な見解では、空(から)鉄砲を向けるよりも、実態としてはFCレーダーによるロックオンの方がタチが悪い。こっちは「いつでもやるぞ」、「やる準備ができているんだぞ」と言う明確な意思表示だからです。

     

    いろんな意見が飛び交ってますが、軍事的視点からすれば、K国の「どのレベルまでが本行動(FCレーダーによる照射)を事前に承知していたか」です。この「事前に承知」の意味は、前もってかかる権限を現場(艦長)に委任している場合を含みます。権限を委任している場合には、事前に「承知していた」「知っていた」と同義になります。政治問題になったので「落としどころを何処にするか」と言うことではなく、実際に「どこまでが承知していたか」が重要です。大統領まで承知していたのか、国防大臣までか、海軍のトップか、艦隊司令官までかなどなど。少なくとも「艦長が知らなかった」は、あり得ないし通用しない。私がその点に注目するのは政治的な意味合いではなく、それ(どのレベルまでが承知)によって当該国の安全保障・国防の在り方から、K海軍の指揮と規律そして士気の高さ(低さ)まで計ることができるからです。

     

    現在の大統領が就任して北との関係は雪解けムード、と言うよりも南北の一体感が醸し出されておりますが、戦後長い間、彼の国の軍は臨戦態勢にありました。朝鮮戦争は継続しており、当然と言えば当然です。それが今どう変化したのか、今後彼ら自身がどう変わろうとしているのか?これは日本にとって、決して他人事ではない。半島情勢は、直接的に我が国の安全保障に関わる問題です。勿論、事案が発生した早い段階(直後)から、日米両当局は緊密に連携している。同盟国・同盟軍として当然のことです。当事者双方の同盟国である、米国(米軍)にとっては迷惑な話だ。中国との緊迫した情勢が続いている米国にとって、米韓関係は日米関係と同じように重要な問題です。

    果たして米国はどうでるか?表には出てこないかもしれない。しかし、それを窺い知ることができるのは、太平洋及び北東アジアの軍事情勢に知悉している駐韓米国大使の動きです。彼が本件について如何なるジャッジをするか・・・。そこから米国の姿勢が見えてくる。彼の国の対応には呆れるばかりですが、変わった隣人の存在や行動を嘆いていても仕方がない。国ごと我が国が引っ越すわけにもいかないし、隣人にそこから出て行けとも言えない。このようなお隣さんと付き合うのはホトホト疲れますが、そういう隣人なんだと認識して付き合う(或いは付き合わない)しかない。

     

    今回の事案で直ぐに私の脳裏に浮かんだのは、昭和12年(1937)に生起したパナイ(パネー)号事件です。拙著『ソロモンに散った聯合艦隊参謀』(芙蓉書房)でも少し言及してます。日中戦争の最中、しかも日米関係が極めて重要で微妙な時期に起きた日米間の不幸な出来事です。簡単に言うと、帝國海軍の爆撃機が揚子江を航海中の米艦船を誤って爆撃し撃沈に至らしめた。日本側にも苦しい言い訳はあるが、明らかに日本側の誤爆事案だった。従って日本は速やかに米国に詫び、賠償金を払って事態の早期収拾に努めた。それで一件落着はしたが、しかし本件が、米国及び米国民の日本に対する信頼に影を落としたことは間違いないでしょう。今回のK事案と同事件は、取り巻く国際情勢、意図と規模・レベル等において、全く異なっていることは論を待ちません。しかし今、私自身を含め多くの日本人が隣国に不信感を抱いているという意味においては、立場は逆ですが同じ構図です。

     

    一点、我々が注意しなければならないことがあります。綺麗ごとを言うようですが、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いになってはいけない。在日に関わる今日の多くの問題、顕在化している事案もあるが、必ずしもそうでないものもある。日本人として腹立たしいこと、政府・自治体の対応、一部日本社会の動きや世間の評価に歯がゆいこともある。しかし、個々の在日全員が問題を有しているわけではない。そこのところを履き違えると、行くべき方向や措置を間違えることになる。我々は「包容力」という、美しい言葉を持った民族です。一方で国家としてやるべきことは、情に流されず「毅然とした対応」が求められる。日本は凛とした国です。

     

    そうありたいと願うが、両者(包容と毅然)の使い分けは難しい。

     

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