日本の常識
2017.02.23 Thursday
何十年も前の、現役(自衛官)の時の話です。
所用で銀行に行ったときのことです。何の用事で行ったのかは忘れました。家のローンの相談か手続きに行ったのでしょう。窓口の女性に、「本人確認ができるものを提示してください」と言われました。迂闊にもその時は運転免許証を持ち合わせていなかったので、海上自衛官の身分証明書を出しました。すると件の行員さんは、私の身分証明書をまじまじと見て言ったものです。「これでは証明になりません。運転免許証か保険証をお持ちじゃないですか?」
は〜〜〜???私が提示した身分証明書には顔写真があり、「海上幕僚長」の職印があります。そのとき私は、遅ればせながら知りました。自衛官の身分証明書は、海上自衛隊株式会社の社員証なんだ。勘違いしないでください。決して、民(みん)を見下しているのではありません。そんな瑣末な話ではありません。
運転免許証を発行しているのは、地方(都道府県)の公安委員会ですよね。私の免許証には、顔写真の下に「埼玉県公安委員会」とあり、その右横には老眼鏡が必要なほどの小さい文字で記された印があります。我々が持っている(持っていた)健康保険証はどうでしょう。自衛官の場合、一般の健康保険証に代わるものは「自衛官診療証」です。これを発行しているのは、隊員の管理事項を担当する部隊の長(1佐又は2佐クラス)です。公安委員会や地方の部隊長が発行した証明書がOKで、日本という国の、海の守りの総本山、海軍(この国では海上自衛隊と呼びます)トップの職印まである証明書は、民間会社の「従業員証」と同程度の効力しかない。
過去のブログでも言ってますが、別に偉そうにしたいわけではないんです。でもどうなんでしょうか、これって。
さみしいでもなく、悲しいでもなく、情けないでもなく。でも、それが日本の現実。多分、現在も状況は変わってないと思う。自衛官だと、住宅ローンなどホイホイ貸してくれるのですが・・・。
話は変わりますが、海外に展開する自衛艦乗員のパスポート(の代わりになるもの)には、先の海上幕僚長(海軍大将)の職印なんかありゃしません。乗員が持って出るのは、艦長(中佐か大佐)がサインした、運転免許証大のIDカード(身分証明書)だけです。これ一枚で通関OK、入国OK、上陸OK。「普通の国」では、艦長の職権はそれほどに権威があり、しかも国際的に認められているということです。パスポートの発行は外務大臣ですよね。即ち、艦長の権限は、この件については外務大臣と同等ということになります。従って、外国に行くと軍艦は、在外公館と同じように治外法権です。
日本の常識と世界の常識には、それほどに大きな差があります。かつて「日本の常識は世界の非常識」という言葉がありましたが、まさにそのとお〜り。
勿論、これは一側面です。なんでんかんでん、ということではありません。誤解なきよう!
それにしても、昔は髪の艶も良かったな〜。仕方ないですな、こればっかりは(笑)
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博海堂