銀座から
2018.02.15 Thursday
田舎者の私ですが、時々銀座に足を運びます。なんて言うんでしょうか、やっぱり銀座は他の街、例えば麻布とか広尾などとは違うような気がする。そう思って歩くからかもしれないのですが、また上手く表現できないのですが、他の街とは違う空気が流れている。昔に比べて旅行者と思しき外国の人が多いけど、新橋と日本橋の間にポッカリ異次元の空間があるような感じかな。今回は亡父がシベリアから持ち帰ったスプーンを額に入れるため、一丁目にある有名な額屋さんを訪ねました。かねてから行かなきゃ行かなきゃと思っていたのですが、やっと持ち込みました。
銀座に行った際には、どこかの店に立ち寄って『銀座百点』という小冊子を貰って帰ることにしています。毎月「銀座百店會」さんが発行しているものです。勿論、同会を構成する店舗の宣伝がちりばめられていますが、掲載されている内容がとても面白い。
先月(1月)の巻頭座談会の項では、グラフィック・デザイナーの麹谷宏さんとソムリエの田崎真也さん、加えてアナウンサーの草野満代さんが「もてなし」について話をしているのですが、いろいろウンチクがあって勉強になりました。一芸に秀でる人はみな違いますね。
例えば、麹谷氏が草野さんに「もらってうれしいものはなに」と訊くと、彼女はすかさず「冷蔵庫にいれなくていいもの」。普通の人だと、まずは高価なものとか美味しいものが閃くでしょう。サラッと応えてますが、なるほど〜と思います。女性、主婦の視点でもありますよね。この方が結婚されているかどうか知りませんが。今日、大概のお歳暮なんかは要冷蔵です。冷蔵はまだしも冷凍品になると、冷蔵庫のやりくりが大変です。自分がやってるようなこと言ってますが(笑)。近いうちに家庭用の冷凍庫を調達しますので、そしたら毛蟹でも金目でもどんどん送ってくださいませ。
あっと、そういえば以前のブログで「お歳暮止めましょうよ」って書いたような・・・。失礼しました〜。
田崎さんがこんなことを言ってます。「フランスでゲストにワインを提供するのは、同じ料理とワインを楽しみ、おいしいという感覚を共有すること」。さすがおフランス、日本で鍋を囲み「ガンガン飲め〜」って言ってるのとちょっと感性が違うね。彼はこうも言ってる。「ワイングラスの足を持って飲まないといけない、と思っているのは日本人だけ。特に女性はグラスの胴を下から支えるように持った方が指が上を向くのできれいに見える」。確かに。ハリウッド映画で、グラスの足を持って飲んでる女優さんはいないんだそうです。コニャック(ブランディ)を飲むときには私もそうしますが、こんなとこから来ているのかな〜と思いました。そういえば、石原裕次郎がブランディ・グラスを手にしている姿は絵になってましたね。知ってたのかな?
「足のほうを持つと、飲むときに頭を後ろにのけぞるような姿勢になる」とも。確かに顎を出してのけぞって飲み干すのは、やや品がないような気がしますな。日本酒の場合は、それで恰好がついてるのでしょうが。要はお酒(アルコール)に対する考え方、飲酒の文化の違いでしょうか。以前、「外国人(エグゼクティブ)に酔っぱらいはいない」って書きましたが、これも酒に関する文化の違いのような気がする。お酒に何を期待し、何を求めるかですね。私の場合は、酒屋さんや飲み屋さんに申し訳ないのですが、多少口が軽くなるのと、血液の循環がよくなる程度の効果しかありません。講演の時なんかはペットボトルじゃなくて缶ビールを演台に置いてくれると、言ってはいけないこともベラベラ喋るのですが・・・(笑)。
次の頁にある、諸田玲子さん(作家)の「伸し餅と母と銀座」と題するエッセーも、ホノボノとしていいですね。語彙はいくらでもあるでしょうに、決して難しい言葉を使うことなく上手に描くもんです。私が真似して「餡(あん)餅と母と高松」って書いても、だれも感動せんでしょう。言ってる意味わかりますか?話は飛びますよ(笑)。
そう、讃岐では雑煮のお餅は「あんこが入った丸餅」と百年前、いやもっと前から決まっとります。諸田さんがおっしゃる伸ばし餅なんて、讃岐人にとっては邪道。白味噌煮込みのこってりした雑煮、香川県民はこれを食べないと正月がきた気がしない。どんなに酒飲みでも、どれほど甘いものが嫌いな人でも、うどんを食べすぎて高脂血症になった小学生もこれだけは食べて宜しい。讃岐の文化だから。この文化・習慣は、遠い昔から当地には砂糖が潤沢にあったことを示唆している。これ即ち、松平の殿様を頂く讃岐は元来豊穣な土地柄であり、生活のレベルが高かった。その証(あかし)は源平(屋島)の合戦に遡るが、怪しげな拙論・推論は後日に取っておきましょう。
因みに、外国人の多くは「あんこ」が苦手です。ゲゲーって顔します。砂糖の塊みたいな極甘ケーキに比べると、余程品(ひん)がいいと思うのですが。
さてさて、以前に書いたシベリア帰りの「一本のスプーン」どんな形に仕上がるか楽しみです。
【高嶋博視のオフィシャル・ブログ】
博海堂
追伸 銀座とは全く関係ない、十年ほど前の話です。フランク永井の歌が大好きな私は、「有楽町で逢いましょう」の歌碑があるとの情報を得て、銀座に行ったついでに有楽町まで足を延ばしました。興味あるものは、自分の目で見ないと気が済まないオッサンです。探したのですが、どうしても(歌碑を)見つけることができないので、交番の若いお巡りさんに「フランク永井の歌碑が近くにあるはずなんですが・・・どっちの方でしょうか?」。巡査君???。私は自信を持って追加情報を繰り出しました。「ほら”あなたを待てば雨が降る〜♪”って有名な歌があるでしょう、フランク永井の」。口ずさんだのが良くなかったか、お巡りさん「それって居酒屋かなんかですか?」。エエ〜!
二人のやり取りを聞いていたのか、奥から少し年配の巡査が真面目な顔して出てきて「このすぐ裏ですよ」。若い方はフランク永井も「有楽町で逢いましょう」も知らんかった。「も〜しもしベンチでささやくお二人さん♪」(若いお巡りさん)は知っとるか?って訊けばよかった(笑)。